仕事に対する思い
名古屋の造船所に17年勤め、廃業を機に平成22年6月に独立。
造船所で働き始めてから、12年目に初めて新艇の建造を任せてもらうことができました。
以後十数艇の新艇を建造し、オンザロックや台風による大規模な修理も手掛けました。それらの船は自分の子供のような気持ちで、今でも忘れられません。
就職して5年目に一度独立を考えましたが、取引先の社長に「できるつもりになっているだけだな」と言われ、改めて先輩の技術との差を知り、未だ未熟と思っている間に、いつのまにか20年近くの年月が経ち、
職人の世界が30年とか50年と呼ばれる所以を身をもって体験しました。今もって造船の奥深さに日々勉強を続けています。
日本のヨット業界は、ヨット人口の高齢化、若者のヨット離れ、円高の影響による輸入艇の好況と厳しい状況が続いていますが、日本の造船技術は決して海外と比較しても劣るものではなく、むしろ高いレベルにあると感じます。
RIV、インフュージョン、カーボンプリプレグなど、独立して改めて勤めていた造船所の技術レベルの高さを知り、長年お世話になった社長や先輩、仲間に感謝するとともに新艇を建造していた経験を生かし、この技術を絶やすことなく日本の造船に生かしていかなければいけないという思いがあります。
FRP、木部品製造、電気配線、デッキ艤装、セール・・・ヨット建造に関わる仕事は多岐にわたり、それぞれを得意な専門家に託す方法もありますが、やはり船は海に浮かべて走らせるモノであり、レストアや修理をするにあたり、バランス、構造、機能といった要素をトータルで考えなければなりません。
家のインテリアを考えるように好きな場所に好きなモノを造作してしまっては、ヨットの場合には安全にも影響を及ぼすこともあります。
個人的な意見ではありますが、ヨット専門の設計士が、もっと仕事をする機会があるべきと思っています。
弊社ではレストアや修理をして安全性やパフォーマンスが落ちることのないように、大規模なレストアや修理をするにあたり、設計士ともコンタクトを取りアドバイスをいただいて進めていきます。
現在は、レストアや修理の仕事が主ですが、やはり新艇を造る楽しさ、喜びは比較になりません。最近では自作ヨットやDIYもブーム?なので、船殻やフレーム、バラストといった主要部分を造船所で造り、内装や艤装はすべてご自身で、というご要望にもお答えします。
家と同じで、既製のヨットは手軽で値段も安く、コストパフォーマンスに優れていますが、ヨットを建造する喜びや楽しさは、造る過程も含めて何倍にも感じられることでしょう。
とにかく、新艇を造りたいと言ってくださるオーナー様の出現、心待ちにしています。
最後に、ヨットは海のレジャーであるため、安全に関しては、より慎重な意識が必要です。製造を生業とする者として、安心してヨットライフを楽しんでいただけるよう、妥協のない仕事をお約束します。